< home2003年秋目次 > 1_エッカマイの夜 > 2_バーンペーの舟タク > 3_遠回りの旅 > 4_セブンイレブンの正体 > 5_バンコクの日本人 > 6_それぞれのホアヒン > 7_ウドンから来た少女 > 8_観光地へようこそ(仮題) >

5_バンコクの日本人

 

 初めてエッカマイに降りてから1週間後、わたしはまたエッカマイに戻ってきた。ラヨーンのバスターミナルからはモーチット(北バスターミナル)行きのバスも出ていたのだが、わたしはあえてエッカマイ行きのバスに乗り込んだ。しかしエッカマイからワランポーンへの「直通」の路線バスはないと言われて肩すかしを喰らう。

 バンコクのどこに着いても天下のワランポーン、路線バスの1路線ぐらいあるだろうと踏んできたのに。これだったらモーチット行きに乗ればよかったな・・。
 エッカマイからワランポーンにバスで行くのは面倒くさい、タクシーで行ったほうがいい。
 ワランポーン行きのバス云々でもめていたわたしたちのやり取りを見ていたとおもわれる通りすがりの若い女性に言われてタクシーに乗り継ぐ。
 我々をワランポーンまで搬送してくれたタクシーは、何でこんな仕事(というのも失礼だが)をしてるの?と聞きたくなるような上品な男性ドライバーで、ワランポーンからどちらに行かれるのですか、と、きれいな英語で聞いてきた。
 ホアヒンです。
 ホアヒンはいいところです、ロケーションがすばらしい、ぜひ行ってみてください。
 ホアヒンには王家の別荘があるとかで、日本で言うなら那須のようなところなのだろうか、タイ人には印象のいい町らしい。タクシーは再三のようにぜひ行ってみてくださいとすすめた。

 ワランポーンで翌日のホアヒン行きの鉄道の切符を買い、両替所に寄って、駅近くの宿にチェックインした。ここには以前も何度か来ていて、駅から近いなどの立地から仲間内にも評判がよく、ここを定宿にしている知人が何人かいる。
 で、前回は会いたくない人に会ってしまったのだけど・・。
 こいつはほんとに小市民なのだ、バンコクから一歩も出ることがなく、もとい、出ることができず、そのくせ言うことばかりがでかい。

 そんな「小市民のY」に初めて会ったのは6年前、二度目のタイ旅行で、バンコクはカオサンに滞在していたときだった。
 Yは初めてのタイを先導してくれたDちゃんの顔なじみだと言ったが、第一印象からしてあまり好きなタイプじゃないので、わたしは少し距離を置いていた。
 それが翌日、チャトウチャック(ウィークエンドマーケット)に行く段になったら、ついてきやがった。どうもタクシー代を浮かせたいらしい、シェアすれば多少割安になる。そしてタクシー車中でずっと地図を見て、現在地を確認していた。どうも遠回りとかされないように見張っているらしい。
 ・・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 わたしは日頃あまりタクシーを使わないのだが、それでも釣銭を全額受け取ったことはほとんどない。タクシーというのは贅沢な乗り物なんである、釣銭を全額受け取るような人柄や状況の人が使うような乗り物じゃないのだ。
 そんなわけで、日頃釣銭を全額受け取りたい状況にあることのおおいわたしは、滅多にタクシーというのを使わない。
 それでもタイでは足がないので頻繁に利用する。細かいバス路線や町の概要を把握していない旅行者には何かと便利な乗り物だ。
 といっても交渉性の場合はどうせボられているので「チップ込みの額面」ということにして商談成立額しか払ったことがないが、メーター性の場合には釣銭はほとんど受け取ったことがない。
 それがYときたらずっと地図を見張り、ああでもないこうでもないと、ぶつぶつ言っているのだから、これにはマイった。それでもドライバー本人に、こっちの道を行って欲しいなど頼めるような人なら堂々として好感も持てるのだが、手前の女房やうちらに向かってぶつぶつ言うのだからたまったもんじゃない。
 わたしに言われたってどうにもできないよ!!!
 チャトゥチャックへ向かうタクシー車中で、わたしはマジ切れそうだった。
 だいたい大都市には抜け道だの裏道だのたくさんのアイテムがあって、それが実際に遠回りなのかどうか、そんなもの土地に通じない旅行者にわかるはずもないのに。
 そしてYは釣銭を全額受け取り、下車後は1バーツ単位まできれいに割り勘にしてくれた。
 ・・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 どんな旅をしようと自由だが、もうわたしにはかまわないで欲しい。帰りのタクシーもシェアしないかと言われたが、バスで帰るとウソをついて単独でタクシーで帰ってきた。

 その晩、Yがさっき知り合った人ですごく面白い人がいるから、一緒に飯を食いに行こうよと誘いに来たのだが、類は友を呼ぶ。これがまたダメを絵に描いたような日本人で、ひどくうんざりした。
 あまつさえ後日チェンマイに行く予定だと言ったら、またも一緒に行こうと言われて、さらにうんざりした。だから翌日、こんな小市民がこんな切符は買わないだろうとおもわれる「一等個室寝台」の切符を買いに行った。
 一等の切符を買ってきたよ。
 そう言うと、Yはすごいねと言ったきり、もう二度と一緒にチェンマイに行こうとは言わなかった。

 しかしそんなわたしの行動がDちゃんにはおかしいらしく、君の頭の中はどうなってるの?と、ときどき聞かれる。
 100バーツの旅社に泊っていたとおもったら、突然一等の切符を買ってきたり、舟をチャーターしたり、プール付のホテルにいたり・・。君の金銭感覚って、どうなってんの???

 そういうDちゃんは時間の感覚が狂っている。一般日本人には信じられないようなことを平気でやらかす。
 今回の出発前に我が家に来たときも、16時30分の成田エクスプレス(東京発)に乗ると言って、16時10分ごろ我が家を出て行った。
 それって物理的に不可能だとおもうのだが・・。
 こんななので、当然ながら飛行機のチェックインタイムにはほとんど間に合ったことがなく、そのくせ呑気に免税品店などのぞき込み、「@@航空@@便にご搭乗の@@様、お急ぎご搭乗ください」のアナウンスが入ってもまだノンビリと煙草なんか吸っている。これで再三フライトを遅らせているというのだから、理解に苦しむ。時間に追われてる同乗のビジネスマンなんかに知れたら袋叩きである。

 そういうわたし自身はわりと心配性なので、時間には比較的余裕を持って移動する。時間がない、時間がない、急がなくちゃ!と追われるあの感覚が怖いのだ。チェックインタイムの1時間以上前に空港に着いていることもおおいし、旅程にも何日かの余裕を持って移動することがおおい。
 最近ようやく勝手がわかってきたので、帰国の間際までバンコク郊外で過ごすことが増えたが、以前は帰国の前日にはバンコクに入っていた。

 しかしそれがDちゃんの人柄なのか、わたし自身は時間には心配性のくせに、Dちゃんのルーズさについて、面白いとおもうことはあっても、いやだとおもったことはない。
 個性の差異を面白いとおもうか不愉快だとおもうか、これが「相性」や「好み」というやつなのだろう。

 まさかとおもうけど・・。Y、いないよね?
 おそるおそる宿の食堂に降りると、本日は不在のようでほっとする。そして以前来たときにはこのホテル、日本人の利用者がおおいと感じたのだが、季節柄なのか今日は日本人の宿泊客は皆無で、かわりに週末という日柄か、タイ人の宿泊客が大勢いるようだった。
 300!!!
 200!!!
 300!!!
 220!!!
 300!!!
 240!!!
 300!!!
 250!!!
 300ったら300!!!!!
 そこを何とか260!!!!!
 だめ!絶対に300!!!!!
 270!!!!!!!
 何の商談をしているのかわからないが、ロビーで金の話をしているタイ人の宿泊客がいた。売り手の言い値は300からびた一文まからないのだが、買い手はそこをどうにかまけてくれとねばり、最終的にいくらでまとまったのかはわからないのだが、買い手は一方的に自分が払える金額を売り手に押し付け、席を立った。そして売り手が買い手の背に向かって叫んだ。
 明日は300だぞ!!!!!!!!!!
 明日「は」ってことは、あいつら毎日こうやって300だ200だとやっているんだろうか、疲れるなあ。
 しかしふたりともバーンペーの舟タクと同様、ケンカ腰になるでもなく、終始笑顔で話していた。ということは、これは「日常会話」なんだろうか、疲れるなあ。

 

 

< home 2003年秋目次 > 1_エッカマイの夜 > 2_バーンペーの舟タク > 3_遠回りの旅 > 4_セブンイレブンの正体 > 5_バンコクの日本人 > 6_それぞれのホアヒン > 7_ウドンから来た少女 > 8_観光地へようこそ(仮題) >

製作者に電子お手紙を送ってみる → mekhong77@yahoo.co.jp

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送