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混沌のアジアビーチ


 タイには多くのビーチリゾートがある。一番人気は日本からの直行便も就航しているプーケットで、他にもサムイ、チャーン、サメット、などなど、南部の海には美しい島々が点在しており、陸にもパタヤ、ホアヒン、などのビーチがある。
 そんな数多いビーチのどこかに自分だけの楽園ビーチがあるのじゃないかと夢に見て、私たちはバンコクを旅立った。
 ちなみに初めてタイのビーチを訪れたのは去年の今頃で、ビザ取り旅行にランカウイ(マレーシア)を訪れたその帰りに、パンガンに立ち寄った。しかし、お天道様を気にしながらビーチに行く人は多いが、お月様を気にしながらビーチに行く人は希少である。ゆえ、私も月の動向までは気にしていなかった。
 パンガンに降りたそのときに、何かおかしいとは思った。何がおかしいって、宿屋の客引きが一人も来ないのだ。タイのビーチを訪問するのは初めてだったが、タイの観光地であれば宿屋の客引きっていうのは必ずといっていいほどにいる。大きな観光地を抱える町のバスターミナルなんかに降りたら、あっという間に宿屋の客引きだのタクシーの客引きに囲まれてしまう。
 それがパンガンには一人もいなかったのである。
 それもそのはず、その日は「満月」だったのだ。
 タイの悪名高いイベントのひとつに「フルムーンパーティー」というのがある。これはフルムーン(満月)の晩に浜に集って酒だのドラッグだのをあおって一晩中騒ぎ倒すという、西洋人ヒッピーが発案したおばか祭りである。満月というのは月に一度の周期で訪れるので、当然おばか祭りも毎月開催される。そもそもは数十人規模のイベントだったのだろうが、今や数千人規模の一大イベントである。
 このイベント、不良タイ人は別として、一般タイ人へのうけは悪い。とんでもないことだと憤慨する人も多いのだが、しかしこのおばか祭り、相当な金が動くのも事実である。おばか祭り前後はハイシーズン料金を適用したって、みんな笑顔で払ってくれるし、何しろドラッグが売れる。
 売れ筋のドラッグはダントツでマリファナなので、誰でもどこでも栽培できる。危ない思いをしてマフィアを通して仕入れなければならないような代物ではない。そんな「ただのクサ」が数百バーツで飛ぶように売れていくのだ。また、ドラッグというのは非合法である。非合法のものの収益を税務署に届ける阿呆はいないので、丸儲けである。
 これはもともとプーケット沖のピピ島で開催されていたのだが、さすがに悪名高くなりすぎてピピは追い出された。孤独な狼が思わず吠えそうな満月の夜にタイ警察がヘリコプターでピピ上空に出現、警察官が空から降ってきて一網打尽、という逮捕劇があったのは有名な話である。
 それにもめげず今日もパンガンでフルムーンが継続されているのは、不良ガイジンのニーズと、大金が動く魅力の賜物であろう。フルムーンに目をつけられなかったら、漁業ぐらいしか産業のなかった小さな島に、大金が降ってくるのである、それも毎月。
 しかし興味のない人間には迷惑極まりない話であり、宿屋の客引きがおらず不審に思ったら、どこの宿も満室だと言われる。何せ島民の何倍もの西洋人が大挙して島に押し寄せるのである、宿泊施設なんか足りるはずがない。客引きだって売る品物(宿)がなきゃ、完売御礼で店じまいである。どおりで客引きが一人も来ないわけである、納得だ。
 どうにか港近くのホテルに空室を見つけたが、あほらしくなって翌日の船で、サムイに渡った。
 さすがにサムイは確立された観光地だけあって、宿の数も充分に足りており、観光客のニーズに合わせて、静かな浜、賑やかな浜、と、いろいろの浜もあり、のんびりとすごすことができた。
 しかしあのエメラルドグリーンの海が忘れられない。
 いつかあの海をわが物にしたい。
 パンガンの海は美しいエメラルドグリーンで、沖(パンガンに渡る船の甲板)では立って泳ぐ変な魚をたくさん見たし、大きなまあるいものが海底にすうっと消えていくのも見た、あれはおそらくウミガメだろう。
 サムイを離れホアヒンに移ってからもなおパンガンの夢は消えることがなかった。
 あれから一年、パンガンばか祭り雪辱戦の日がやって来た。
 おばか祭りの雪辱戦を心に決め、さらには自分だけの楽園ビーチを求めて、1月30日、私たちはバンコクを離れた。最終目的地はパンガン(おばか祭り雪辱戦)なのだが、まずは都心にほど近いホアヒンへ向かう。
 ホアヒンは都市型のビーチリゾートで、残念ながら海はそれほどきれいではなく、さらには波も高く、あまつさえホアヒン(石頭)という地名のとおりに大きな岩がごろんごろんとしていて、波に飲まれてあわあわしていると突然大岩にごつん、というトラブルも起こる。しかしある意味ではとてもタイらしいビーチでもあり、南部のビーチや町を訪ねる際の中継点としては面白い町でもある。
 メインビーチはホアヒンビーチで、日中にはたくさんの「海辺のレストラン」が出る。浜一杯に所狭しと並べられた傘、傘の下にはテーブルセット、南国ムード全開。傘の下のテーブルに腰掛けると従業員がメニューを抱えてあらわれて、食事から飲み物まで何でも注文を聞いてくれる。
 といっても、おしゃれなものを想像されては困る。誰も困らないが困る。
 ここはあくまで「海の家」なので、メニューは当然、おでんだのヤキソバだのカレーライスといった品揃えになる。ここはタイなので、出される料理は、チャーハン、ヤキソバ、もち米、焼き鳥、といった世界である。タイ人にとっての海の家は、日本人の思う海の家よりは若干高級なものらしく、トムヤムクンなんかも食べれる。しかしやっぱりおしゃれというかんじではない。トムヤムクンが鍋仕立てで出てきちゃったりなんかして、浜辺の鍋パーティー開催中である。日本の浜に置き換えるなら、浜辺の寿司パーティーといったかんじだ。おしゃれなんて世界からは程遠い。
 とりあえず海辺のレストランでコーラを一本頼む。すると程なく、天秤棒をかついだ売り子がぞろぞろやってくるので、売り子たちから軽食の類を買う。タイの食堂は持ち込みオッケーなので、真剣に食べたくない人は売り子から軽いものを買えばいい。アイスクリーム、カットフルーツ、ドーナッツ、といったしゃれた軽食から、またも、落花生、スルメ、焼きタマゴ、といったおしゃれという言葉からは遠くかけ離れた軽食まで、何でも買える。だいたい浜を天秤棒担いだ売り子が右往左往しているっていう時点で、おしゃれなんて世界からはもう隔離されてしまっている。
 売り子たちの中には土産を売るものもいて、何故か浜まで来て東北名産だというシルクモドキの束を担いだ売り子が次々にやってくる。聞くと彼らはほぼ全員が東北出身の出稼ぎだという。やたら人懐こい物売りのにいさんと少し話したが、彼もまた東北の出身で、田舎に女房と子供を残してホアヒンに来たと言う。肩に下げた私物入れと思えるカバンからアルバムを取り出し、これが俺の田舎だよ、これが俺の女房でこれが俺の息子だ、と、説明を始めた。これが俺の家だよ、小さな家だ、村にはまだ水道が来ていない、これが飲料水さ。そういって土産売りは民家のに軒先に置かれた水がめを指さした。
 俺の顔、日本人みたいだろ?君たちによく似ているだろ?
 何度も、何度も、そう言われたことが印象に残っている。
 他にもマッサージ屋だの刺青(ペイント)屋だの山岳物売りまでいて、まさにここは「混沌のアジアビーチ」である。浜まで来て山岳物売りに遭遇するとは思わなんだ。
 そんなホアヒンビーチの人気のアクテビィは乗馬と貸し浮き輪。何で浜まできて「おんま」?そう思う向きもあるだろう、というか、そう思う、思い切り思う。しかし実際に浜を「おんま」がぱっぱかぱっぱかと歩いているのである。どうにもこうにも不条理である。しかし「おんま」はけっこうな人気で、大勢の観光客が「おんま」に乗って浜を通過していく。そして沖には貸し浮き輪軍団。ひとつの貸し浮き輪に何人もがつかまって、ぎゃあぎゃあと波にもまれているのが見える。
 スアンサヤームの項で述べたように、タイ人は水着を持っていない。よって、着の身着のままで海にどぼんだ。あそこにもここにも、ずぶぬれの若い男女や家族連れがいる。
 ちなみにホアヒンを訪れる観光客の客層は、外国人とタイ人が半々といったかんじである。外国人には高齢の西洋人が多く、タイ人には家族連れや若い男女のグループといったグループ旅行の人が多く見受けられる。西洋人婆ちゃんのトップレスはありがたくないが、全体に健全かつ平和な雰囲気である。
 旅行者物価も人気上位のプーケットやサムイ、不良ガイジンスポットのタオやパンガンに比べると格段に安く、ときに高いレストランに入っても、高いなりの食事が提供されるだろう。プーケットのことは知らないが、サムイもパンガンも、旅行者物価は非常に高い。北部や東北部では5-10バーツで利用できる乗り合いピックアップ(ソンテウ)の乗車賃は30-50にまで跳ね上がる。交渉の余地なんかない。まけろなんて言ったら、他の車をあたってくれ、と、素通りされるのがオチだ。食事も宿泊施設も、すべてが高価だ。
 ホアヒンの旅行者物価は北部や東北部に比べると割高だが、それでもバンコク並である。タクシーも大幅に高く言ってくることはなく、近距離であれば最初の言い値は50というのが相場である。まけろと言えば、交渉の余地もある。
 不良ガイジンのいない平和な浜がお好みなら、ホアヒンは悪くない浜である。しかし、安く上げたいからといってホアヒンを選ぶのはどんなもんだか、である。何につけても、海の質が落ちる。やはり人気上位順に海は美しい、さらには不良ガイジンに乗っ取られてしまった海はもっと美しい。
 不良ガイジンのルーツは、西洋人のバックパッカーである。彼らは押しなべて好奇心が旺盛で、行動力もある。どちらかというと沈没しがちな日本人バックパッカーにくらべると、良くも悪くも元気なのである。ゆえに不便な未開の地にでも美しい浜があると聞けば、小舟を乗り継ぎ、漁船をチャーターして、映画「ザ・ビーチ」よろしく上陸する。道路なんか整備されていなくたって、野を越え山越え谷越えて、ザックを担いで進んでいく。宿なんかなくたって、テントと寝袋を持参である。やつらは伊達に荷物がでかいわけじゃないのだ。
 そうしてたどり着いた秘境の「秘密の地図」が類から友に受け渡され、続々西洋人バックパッカーが上陸し、おばか祭りにいたる、というのがパターンである。そして、公共の移動手段が整って、まともな宿泊施設が整って、ガイドブックに名をあげて、我らが一介の観光客が気軽にたどり着けるようになる頃には、すでに島は不良ガイジンに占拠されているというのが、これまたパターン。それでもさすがは元秘境。そこではすばらしい大自然があなたと私を待っていることだろう。
 そんなこんなで、タイらしさを求めるのならホアヒンのようなビーチも悪くないが、美しい海を求めているのならホアヒンはちょっと違うと思うのだ。
 そんなある意味では大変タイらしいといえる浜の背には、大型リゾートホテルが何軒もそびえている。有名チェーンではヒルトンもある。そんな大型ホテルの居並ぶ通りよりもややバンコク寄りの海辺には、手ごろなゲストハウスが何軒かある。とはいっても、200-300で泊まれるようなところはない。いずこも400-600ほどと、そこそこのホテル並の料金を請求される。といって、それほど高級感のある宿でもない。しかし、「海の上」に宿があるのだ。通りを一本越えて陸に上がってしまえば100バーツクラスの宿もごろんごろんとあるのだが、「海の上の部屋」を見てしまうと、もうかなわない。500バーツがなんぼのもんじゃい、わしゃ日本人やで!!!と、ヘンテコな大阪弁で叫びたくなる。
 ちなみにこれ、ハイシーズン(乾季、暑季)料金である。ロウシーズン(雨季)はもう少し安くなるはずだ。
 海沿いの宿はいずれも「とまや形式」の半水上家屋である。海沿いの高台から海に向かって大きなベランダが延びていて、そのベランダの上に客室をしつらえた、と思えばいい。満潮になると床下にまで海水が上がってきて、足元でざぶざぶと音を立てる。部屋の前の通路や、海にせり出したテラスに出れば、視界にはみどりの海が広がって、まさに80年代江ノ島気分。安っぽい木造の家屋を可愛い色のペンキで塗りたくってどうにか盛り上げようとしているあたりも、80年代ポップでチープなペンションムードばっちり。どこからともなく聖子ちゃんの歌声が聞こえてきそうなシーサイド(オンザシー?)ペンションなのである。
 そんなシーサイドペンションで、一人のばかと出会った。ばかはタイ国籍保有、確か去年知り合ったとき25だか26だと言っていた。ばかはとあるシーサイドペンションに入り浸っているのだが、いまだばかが働いているところを見たことはないので、おそらくボスの息子か何か(従業員ではない)なのだろう。いつも宿のベランダをぷらぷらと徘徊していて、日本人がチェックインするのを待っている。
 ちなみにこいつの初対面の挨拶は、ナンパ、サイコー!ニホンジン、オンナ、サイコー!であった。
 ばかである・・。
 ばかはタイ人にも西洋人にも興味がないらしい。タイの女なんか可愛くない、西洋人は何でもでかくて好きじゃない、女は日本人に限る、というのが、ばかの持論である。しかし、日本人なら誰でもいいというわけでもなく、アノオンナ、キレージャナイ、キレージャナイハ、ナンパジャナイ、とか、そんな失礼なことも言う。
 余談になるが、チェンマイの観光タクシーUもまた日本人大好タイ人の一人である。彼はナンパ師ではなく純愛野郎で、これはこれで手に負えないのだが、その話はまた別枠で書くとして・・。Uいわく、日本人の女の子はみんな可愛い、のだそうだ。
 そうか?不細工なのもいるぞ?
 そう言ったが、そんなことはない、と言う。
 そんな話をしているさなかに、我々の前をすさまじい日本人の女性グループが通過して行った。全員、可愛いなんて言葉とははるか縁遠いすごい地味な女で、どれもこれも救いようがないというレベル。
 ほら見ろ、可愛くない子だっているじゃないか!
 そう言うと、Uはこう言った。
 あの人たち、日本人じゃない!みんなタイ人!化粧と服、真似するだけ!
 ・・・・・。
 不細工な日本人は、少なくとも「Uの中」には存在しないらしい。
 話はホアヒンのばかに戻って、ばかは日本人がチェックインするのを待ち構えていて、女の子の客なら食事やゲームに誘い、男の子ならノリが合うかどうか少し様子を見て、ノリが合うようならナンパチームを結成するのだという。日泰合同ナンパチームを結成して、プーケット沖のピピまでナンパ旅行に行ったこともあるというのだから、筋金入りのばかである。
 でもピピは好きじゃない、ピピの宿はどこもタイ人お断りなんだ、ここは俺たちの国なのに・・。タムマイ(何故)???
 片言の日本語とデタラメな英語でしゃべっていたばかが、「何故」という語だけ、強く、はっきりと、「タイ語」で言った。
 ピピは前述したように、ばか祭り会場に抜擢されことがあるという、ありがたくない過去を持つ島である。こういう場所にはいずれタイ人が出入りできなくなる傾向にあるようだ。もちろんそこで働いている人は別枠だが、観光客は締め出される。麻薬の売人や娼婦、ナンパ師といった不良タイ人の締め出しのためだろう。誰でもオッケー、カモンカモンで商売をしていたら収拾がつかなくなってしまう。
 バンコクのカオサン(*1)も好きじゃない、あそこもタイ人お断りだよ、だいたいカオサンの女はブスばっかだ。
 ばかは投げ捨てるように言った。
 それが去年のことである。
 あれから一年、ばかの姿が見えない。ついに定職でも見つけて堅気になったかな。なんて思っていたら、ある朝、客室の外から奇妙な日本語が聞こえてきた。
 ホリデ〜、ホリデ〜、寝てるじゃないよ〜。寝てるはだめよ〜。
 何やら奇妙な「ふし」までついている。
 うみは、きれい〜〜〜。
 ・・・・・。
 「海はきれい」って、意味がわからないぞ。全然わからないぞ・・。
 呆れながら部屋を出ると、ばかが女を連れて歩いていた。当然、日本人。今、ここに泊まっている日本人は、うちらと彼女だけらしい。
 隣のゲストハウスには日本人がいっぱい来るのに!うちはさっぱりだ!つまらない!
 ばかはふてくされている。
 ここはひとつばかのために、ガイドブックに投書してやるか。


> ホアヒンの@@@には日本人好きのおにいちゃんがいて、日本人客に親切にしてくれます。特に若い女性客には親切なので、女性の皆さん、ホアヒンで困ったことがあったら是非@@@をたずねてみてください。彼は日本語もわかるし、とても頼りになります!



 こんなもんでどうだろうか。
 しかし不思議だ。同じことを書いているだけなのに、これをこう書いてしまうと、だいぶんと向きの違うものになってしまう。


> ホアヒンの@@@には日本人好きのナンパ男がいて、日本人客と見ると、女性を紹介してくれ、と、うるさいです。特に女性客にはしつこくしてくるので、女性の皆さん、気をつけてください。片言の日本語もあやしいです!



 面白いことは、どちらの情報も、うそではない、と、いうこと。
 こういうことを考えていると、この世には正誤とか善悪なんてものは存在しないんじゃないかしら、と、思えてくる。社会主義の善悪、イスラム教の善悪。そんなもの、ありはしないんじゃないかしら、と、思えてくる。
 結局のところ、自分がいいと思うこと、好きだと思うこと、哀しいと思うこと、情けないと思うこと。自分の感情と判断力を信じて生きていくしかないのだろう。
 情報なんかいくらでも操作できるのである。
 さて、どっちの情報をガイドブックの編集室に送り付けようか。
 っていうか、すでに「@@@にはナンパ男がいます、気をつけてください!」っていう情報が掲載されてんじゃないかしら。だからここ、異常なほどに日本人客が少ないのじゃないかしら・・。
 ばかの財布の中には今日もドル札が何枚か入っていて、ばかはやっぱりばかのままだった。ヤミ両替か何かに手を出しているのだろう。
 そうそう、ホアヒンの宿には西洋人の家族連れがいて、おやじがラオスのガイド本をひろげていた。ラオスに行くのか、と、たずねると、そうだ、と、言う。行ったことがあるよ、と、言うと、どうだったか、と、言うので、何もなかった、不便だった、と、言うと、おやじは目をかがやかせ、それはすばらしい!と、言った。そして、そこはジャングルか、と、さもうれしそうに言うのだった。ああ、ジャングルさ、と、答えると、蛇はいるか、鰐はいるか、と、また眼を輝かせて言う。いるいる、いっぱいいる、と、答えると、おやじはまた満足そうに笑って、すばらしい!と、言った。
 こいつら、完全に文明に冒されている、重症だ・・。



■カオサン(*1)
 バンコク屈指の安宿街。


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